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閑遊閑吟 

ラヴソング

レオン・ライの映画を観てみたいんだけど、どんな作品に出ているの?という問い合わせが多いので(ウソ、ウソ。)、
特にお奨めの何本かをご紹介いたします。

まずは香港映画界珠玉の名作と言われる『ラヴソング』です。これでつかみはオッケーでしょう。

この映画は、大陸から香港に夢を求めて出稼ぎにやってきた一組の男女の1986年の偶然の出会いから1995年までを描く、
言わば香港版「10年愛」の物語です。

(1998年に常盤貴子、福山雅治主演で放映されたTVドラマ『めぐり逢い』は絶対この映画のパクリだと思ってるんだ、私は。
こっちも楽しんで見ちゃったけど)

1997年の香港返還を目前に控え、香港人としてのアイデンティティーが各自問われる中でこの映画は1996年公開され、
登場人物たちの心の葛藤がうまく観客とシンクロして、絶賛を浴び、その年の香港アカデミー賞9部門を受賞すると言う快挙をなしとげました。


レオンが演じるのは天津から香港の叔母さんを頼りに出稼ぎにやってきた自転車の似合う純朴な青年シウグァン。
ちゃっかり天津に彼女を残してきていて、そのうち香港に呼び寄せて結婚するのが夢だったりします。
マギー・チャン(『花様年華』『宗家の三姉妹』などで日本でもファンが多いですね)扮するレイキウは、
バイトを掛け持ちして、精力的にお金を貯めている一見現代的な女性。
香港人のフリをしていますが、実は彼女も大陸の広州出身で、母のために故郷に家を建てるのが夢です。
この二人を結びつけるのが、テレサ・テンの歌声でした。
この映画の原題『甜蜜蜜』も、1979年に香港で発表されたテレサ・テンのヒット曲名です。
テレサ・テンは台湾で生まれていますが、彼女の父親は大陸出身で、国民党の軍人として台湾に渡ってきた人です。
文化大革命中は、大陸ではテレサ・テンの歌は風紀を乱すものとしてご法度になっていました。
それが、文革後は大っぴらに彼女の歌を口ずさみ、曲に合わせてダンスを踊る光景が見られたといいます。
大陸ではそんな風に大流行でしたが、それをはた目で見ていた香港の人にとっては
テレサ・テンは一種ダサいと捕らえられていたようです。
大陸出身のシウグァンとレイキウは、そんなことは知りませんから、ついついテレサ・テンの歌には反応してしまいます。
そうこうするうちにレイキウも大陸から出稼ぎに来たのだということがバレ、二人の関係は急速に接近します。
最初のラブシーンがまた素晴らしいです。いや、レオンファンならずとも、
あの餃子(!)を食べたあとのキスシーンはくすぐったくなるはずです。
純朴そうに見えるシウグァンが実は絶倫※であるという設定もにくいです。あ、いや、そういう映画ではありませんので、念のため(汗)。

で、物語はシウグァンのフィアンセが香港にやってくるというあたりから、悲恋物となっていくのですが、
ここからは観てのお楽しみといたしましょう。

この映画の魅力はキャスティングの良さにあります。
レオン・ライは実際に5歳まで北京で暮らし、その後香港に移住してきて、子供の頃は広東語がしゃべれず、苦労したということです。
雰囲気的にも、背が高く、骨格がしっかりしていて、色白で、いかにも中国北方の男性という感じです。
ここで断っておきますが、レオン・ライは本来は都会的で色男風のキャラで売っています。
昔、ジャッキー・チェンが主演し、後藤久美子、ジョイ・ウォンが共演した『シティハンター』という映画をご覧になったことがある方は、
その中に出てきたトランプ男を思い出していただければ、わかると思います。
あれがレオン本来の芸風です。レオンにとっては『ラヴソング』は新しい役作りで成功した例と言えるでしょう。

マギー・チャンの役は、最初はフェイ・ウォンにオファーされていたと言うことです。

フェイ・ウォンも北京で育ち、18歳で香港に出てきました。
ピーター・チャン監督の構想では、北京出身の二人がまず頭にあったのでしょう。
でもフェイ・ウォンはスケジュールの都合がつかず、マギー・チャンに白羽の矢が立ったのですが、結果的にはそれでよかったと思います。
やはり苦悩の表情は、香港女優の中で、マギー・チャンの右に出るものはおりません。

また、脇を固める俳優もいい味を出しています。
レイキウを愛する黒社会のボスを演じるエリック・ツァンは香港アカデミー賞助演男優賞を獲得しています。

シウグァンが通う英語学校の怪しい教師は、ウォン・カーウァイ作品で撮影を勤めるクリストファー・ドイルです。
彼は、この映画に出るとき、「マギー・チャンとラブシーンがあると言われて喜んでスタジオに行ったら、
レオンがニヤニヤとオレの顔を見ていた」と言っていたとかいないとか。

とまぁ、長々と書いてきましたが、この映画は香港映画にはめずらしく、突っ込めるところの少ない、かなり上質で丁寧に作られた作品です。

ポイントはテレサ・テンの歌、そして自転車です。さぁ、あなたもご一緒に!

♪ティエ~~ンミィミィ~~~~♪

※「絶倫」はちょっと誇張してます。ハハハ。
何故「海パン」はいているのか、不思議ですよね?わからなくって当然です。
レオンのインタビュー記事で、「どうしてシウグァンは海パンをいつもはいているのですか?」という質問があったのですが、
どうやら、シウグァンが、血気盛んなので、サポーター代わりにしている、という設定らしいです。
レオンは「監督の趣味なんでしょう」なんて答えていましたが・・・(ーー;)。



註】 このレビューは昔、友人の映画サイト掲示板にて書き下ろしたものです。
   自分のHP「Sugar In The Marmalade」に載せていましたが、
   この度サイトを閉鎖することに決めたため、ブログのほうに転載いたします。
by leonpyan | 2005-12-01 00:00 | 映画 | Comments(0)

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