2014年 03月 19日
時を、刻む。
腕時計をつけなくなって久しい。
20代の頃は時計が大好きで香港に行くたびに手頃な値段のものを購入していた。
今は海外旅行に出かけるときくらいしか取り出さなくなってしまったけれど。
当然のことながら、引き出しの隅から手に取るととっくに電池は切れている。
本当に何年ぶりかで近所の小さな宝石店を訪れた。
ネクタイを締めベストを着た初老の男性がにっこりと迎えてくれた
「これをお願いします」と時計を差し出す。
男性は小さな机に座り、拡大鏡を使いながら電池を替えてくれる。
その丁寧な仕事ぶりを見ていたら、妙に懐かしい気持ちになった。
眠っていた時計を優しくそっと起こすような、そんなまなざし。
この男性は本当にいくつもの時計をこうやって起こしたり直したりしてきたのだろう。
また時を刻み始めた時計の針は心なしか弾んでいるように見えた。