2013年 06月 11日
グランド・マスター
グランド・マスター (2013) 【監督】ウォン・カーウァイ 【出演】トニー・レオン / チャン・ツィイー / チャン・チェン / チャオ・ベンシャン / シャオ・シェンヤン / ソン・ヘギョ / マックス・チャン / ワン・チンシアン |
ウォン・カーウァイのカンフー映画、と聞いて
武侠映画の範疇のはずなのにアクションシーンがなかった『楽園の瑕』を思い出した。
まさかアクションシーンのないカンフー映画は撮るまい?と思いながら予告編を観ると、しっかりそのシーンはあるらしい。
はたして本編の冒頭も雨の中の戦いのシーンで始った。
これはちゃんとしたカンフー映画かも、と姿勢を正して観た。
でも映像はやはりカーウァイだ。
スローモーションやストップモーション、アップの多用。
アクションと美意識が交錯する、なかなか新鮮な撮り方ではあった。
(役者がドニ-・イェンやジェット・リーだったら、
もっとちゃんとアクションわかるように映せと文句言ったかもしれないが)
途中から、これはやっぱりアクション映画というよりは
ラブストーリーに近いのね、と思い当たったが、
それはそれで楽しめた気がする。
何と言ってもチャン・ツィイーは格好よかったし、
ソン・ヘギョもものすごく綺麗だった。
(カーウァイ監督はソン・ヘギョにチーパオを着せたかったのね。)
二人の美女の間でにんまりと余裕をかますイップ・マンの役はトニー・レオンの真骨頂だしね。
イップ・マンと若梅のアクションシーンの中の
「まじで恋する5秒前」的なショットもカーウァイならでは。
一方で、カーウァイの映画にしてはテーマがすごくわかりやすかったのは意外。
実話を元にしているからかもしれないが、グランド・マスターそれぞれの生き方が胸に迫ってくる。
心配していた日本軍シーンも淡々と描くのみに留まり、そのあたりの節度はさすがだなと思う。
とは言え、チャン・チェンとトニーはいつ戦うのだろう?と
ラスト近くまで期待して観ていた私は
これがカーウァイの映画だということをちょっと忘れていたかもしれない。
全く接点がなく、落としどころがないチャン・チェンのこの役周り、
『欲望の翼』で出てきたトニー・レオンの役どころのようなものなのか。
次回作あたりでこのもやもやは回収されるのだろうか。