2011年 08月 03日
サンザシの樹の下で
【監督】チャン・イーモウ
【出演】チョウ・ドンユィ / ショーン・ドウ / シー・メイチュアン / リー・シュエチェン / チェン・タイシェン / スン・ハイイン
ストーリーはとても古典的な純愛ストーリーで、特に目新しさはないのだけれど、
そこはさすがにチャン・イーモウ、この手の映画はまかせなさい、とばかりにしっかりまとめてます。
下手をすれば単調で幼稚な恋愛モノになりそうなお話ですが、この映画の中国国内での成功の鍵はやはり主演二人の初々しさにあるのでしょう。
キャスティングの上手さもチャン・イーモウの真骨頂と言えます。
ヒロインのチョウ・ドンユィはか細くて薄幸そうな表情をしているのですが、笑ったときにパッと明るくなるのが素晴らしいですね。
舞台で踊る場面でも凛とした顔がいい。将来はものすごく化けるかもしれません。
相手役スンを演じたショーン・ドウ、チャン・イーモウにしては珍しく正統派二枚目を起用。
これがまた若い頃の中井貴一に似ていて、私の好みでした(笑)。
チャン・イーモウお得意の色彩にこだわった映像は前面に出さず、あくまで色調を地味に抑え、ピュアな白を多く配したことも原点回帰の一つの手法でしょうか。
場面の転換にブラックアウトと説明字幕を多用したのも昔話を紙芝居で語るかのごとく計算された演出なのでしょう。
高度成長をひた走る現代中国ではありますが、そこに至るまでには大勢の人が政治闘争に翻弄され、国の政策のために命を落とす人たちも少なくなかったわけです。
そんな時代を経て今がある、ということを還暦を迎えたチャン・イーモウ監督も噛みしめているのかもしれません。
そして、もしかしたら、昔に置き忘れてきてしまったものをもう一度探し出す意味も含んでいるのかもしれない、なんて思います。